2013年01月03日

柴田錬三郎賞受賞 角田光代『紙の月』

紙の月紙の月
角田 光代

角川春樹事務所 2012-03-15
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角田光代『紙の月』
第25回柴田錬三郎賞受賞。
読みだしたらノンストップでした。銀行から巨額のお金を横領し逃亡した梨花。犯罪に手を染める動機は?角田さんが描く心の闇を題材にした作品は好き。
お金は魔物。生活をするうえで必要だけど、溺れてしまったらアウト。しかし、犯罪に手を染めることはなくても、借金で苦しみ自転車操業をしている人は多いのかもしれない。

日経平均が右肩上がりだった頃に、仕事で出納担当や9ケタの金額の伝票や当時時価評価で多額な金額の証券を見ることがあった。金融関係に勤めていたのではないですが、資産を運用、管理する部門にいました。定期的に会計監査や税務調査があれば、ピリピリした空気が流れていた。とても悪いことができる雰囲気ではなかった。また、実家は、豪華食事ではないが三食食べることができ、衣類は親族で一番上だったのでおさがりを着たことがなかった。母が手作りしたワンピース、祖母の手編みのチョッキなど、既製品でない洋服を着ていた。裕福ではないが、貧乏ではない生活。子どもの頃は几帳面な性格でお小遣い帳を記録。あまりおねだりをしたことはない。結婚後、夫婦でお金の使い方は話すけど、お金の価値観が極端に違うことはなかった。赤裸々に生活を書くことを避けていたが、この作品はお金の価値観や育った環境が重要だから、敢えて記す。

以下ネタばれがあります。
先入観なしに読みたい方はここまで。

梨花は私立の女子校で少女時代を過ごし、短大を卒業後就職、寿退社。新婚当時は家を綺麗に掃除をし、夕飯を作り、習い事をして充実した日々を過ごす。子どもができずに悩んでいたが、気分転換に銀行で扶養控除以内の給料のアルバイトを始める。それは、わだかまりを埋めることの始まりだった。顧客から信頼され営業実績がよくなりフルタイムで働くようになる。徐々に夫に遠慮していた買い物が贅沢なものになっていく。職場のお金を使うきっかけは、たわいのないもの。わだかまりが、また埋まる。梨花は物欲を満たしていく。さらに性欲。転がり出したら、坂道を下る速度を増す。借金は雪だるまのように膨らみ、金銭感覚は完全に麻痺。

わたしは早く梨花の不正を気付いてあげて、と思いながらも。落ちてしまうのは容易いと達観と矛盾が生じた。それは先述の自分のお金の価値観や人生を、振り返ってしまうから。わたしは大丈夫、溺れたりはしない。理性の歯止めが効いている、と思った。物欲がないといたら嘘になる。満たされない気持ちを埋める動機も、わかる気がする。
終盤わたしは涙がこぼれそうになった。悔しいのか、憐れみなのか不明。
お金では買えない大切なものもある。
女たちの焦燥感だけの話ではない。
読んでいて厭になることもあるかもしれないけど、渾身の一作。

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posted by 美結 at 11:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 角田光代 | 更新情報をチェックする
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