2010年03月24日

罪を赦すこと 三浦綾子『続 氷点』

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三浦綾子『続 氷点』
『氷点』の続編。
養女とした育った陽子。自分の出生の秘密を知り苦悩する。また、義兄の徹は陽子を妹以上に愛していた。育ての父も妻、友人、子どもたちの狭間で葛藤。運命に翻弄されながら、わが道を探す陽子。

テーマが「罪を赦すこと」。
犯罪は罪。
不倫も罪。
秘密は守り通す意義。

40年前の作品なので貞操感が違う。愛し合えばなんでもありと思わないが、当事者だけの問題ではない、と前面に押し出されていた。端的にいえば、不倫や禁断の恋も違和感なく読めるので、「物語」と思いながらも何度も止まり、仮定として自問自答を繰り返した。
誰しも、あの時こうしていれば後悔することはあると思う。わたしも何度かの人生の岐路があり、後悔や自分を責めたり、責任転換したこともあった。人生の半分は過ぎ、多少は過去過去と思えるようになったこともある。個人の経験値で、感情移入が違うと思う。
また、陽子も徹もしっかりしていて、同じ歳だったころが恥ずかしかった。
新聞連載で話題を呼んだベストセラー小説。そこには、時代が変わろうとも普遍的なテーマがあった。起伏にとんだヒューマンドラマ。
昭和の香りがする本を読んでいると、新刊と違う醍醐味があり、熟成され味わい深いものだった。

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タグ:三浦綾子
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2008年12月24日

宮部みゆき 平成21年元旦から新聞連載開始

12月23日(火・祝)読売新聞朝刊より。

平成21年元旦(2009年1月1日)から宮部みゆきが読売新聞で連載小説がスタート。
『三島屋変調百物語事続(みしまやへんちょうひゃくものがたりことのつづき)』。
『三島屋変調百物語事始』シリーズの続きで単独でも楽しめる内容と、コメント。
挿絵・題字は南伸坊。

やはり『おそろし 三島屋変調百物語事始』を読んだほうがいいのかな。
宮部さんの時代物は未読。
それと怖い話がやや苦手。
しかし、ボーダーラインは判らない。

おそろし 三島屋変調百物語事始おそろし 三島屋変調百物語事始
宮部 みゆき

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2008年11月09日

読売文学賞受賞作 水村美苗『本格小説』

本格小説〈上〉 (新潮文庫)本格小説〈上〉 (新潮文庫)

水村 美苗

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水村美苗『本格小説』。
祐介は友人の別荘に遊び行き、道に迷い山荘を見つける。そこには昔は美人だったと思われる老婆が三人。お手伝いの冨美子、海外で事業が成功した東太郎、太郎に想いを寄せたよう子、彼らの人生が昭和史と連動するように語られる長編小説。
読売文学賞受賞作品。

あらゆる感情が入り混じり、交錯する重厚な長編小説。
装丁の美しい単行本で読みました。
今年読んだ本では、ベスト10に入るぐらい好きな作品。
綺麗な日本語で綴られているのに、翻訳小説のような雰囲気が漂う。
上巻ではなかなか核心に触れず読みづらいですが、下巻ではその構造の巧さが光り、その世界に没頭。以下ネタバレしていますが、例え読んだとしてもこの本の魅力を損なうことはないと思います。








次へ。
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2008年07月27日

40年前の大ベストセラー小説 三浦綾子『氷点』

氷点 (〔正〕 上) (角川文庫 (5025))氷点 (〔正〕 上) (角川文庫 (5025))

三浦 綾子

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三浦綾子『氷点』
昭和21年。辻口医院の娘、ルリ子が殺される。娘の死を悲しむ夫婦。
夫は娘の殺害時間、妻が不貞をしていたのでは疑惑を抱き、犯人の娘を養女(戸籍上は実子)にして、妻に復讐する。
妻の夏枝は男なら誰もが見とれるほどの美貌の持ち主。失恋なんて知らない奥様。娘が殺害され悲しんでいたが、なにも知らずに陽子を溺愛するが、事実を知り豹変する。
兄、徹は妹が血の繋がらない兄弟と感じ取り、異性として意識しだす。
娘の陽子は出生の秘密を知らずに、とても我慢強く、逆境にめげずに生きていく。
傍から見れば裕福そうな家族に少しずつヒビが生じて、真実が明かされた時に。。。

戦後間もない時代の旭川が舞台。当時の日本はまだ食べるものも手に入らず、辻口家が裕福であるのが分る。そんな時代に発作的に殺人を起こし、家族の賊命が変わっていく。
夫は妻に疑念を抱き復讐のため、養女にするが、殺人犯の娘を愛することができず苦悩する。この小説のテーマは原罪。
原罪とは新明解国語辞典から引用。
原罪・・・[キリスト教で]人類の祖アダムとイヴが禁断の木の実を食べた結果、人間が生まれながら負わされているという意味。

友人の言葉から
「汝の敵を愛せよ」

と言われて、苦悩末決断するが、陽子を愛そう、我が子のように可愛がろうと頭で考えても体が拒絶してしまう。陽子には罪はないが、事件が起きれば家族まで巻き込んでしまい、無関係と思っても壁を作ってしまうのは止む得ないと思ってしまう。昔、ひったくりあったことがあり、後日犯人は捕まった。暴力などを受けなかったら心理的に恐怖も少ないし、犯人を恨むこともない。何年かに一度思い出すぐらい。でも殺人は違う。加害者も被害者も生涯苦しむことになる。今週も理不尽が殺人事件が相次いだ。人を殺すということは罪なことだと認識を一層強まる。ただ、犯人の家族に偏見を持ちたくないと理性では思っているけど、実際、事件に巻き込まれたら・・・正直自信がない。
恨んだり、妬んだりするネガティブな感情も持ちたくないと言い聞かせていますが、この本を読みながら、心が振り子のように大きく何度揺れた。
妻の夏枝は時に母でありながら、女になる瞬間は怖さを感じる。陽子の秘密を知ってからの数々の行動。浅ましいと思いながら、人間の悪の本性が赤裸々で胸が詰まる。なにも知らずに陽子と対面し、可愛いと抱っこする姿が凄く印象的なだけに、根深い思いが言い切れない感情となっていた。
陽子は幼心に養女では思いながら、母や父、兄に感謝しながら生きていく姿はいたいけ。母の態度に対しても反抗的な姿勢を示さず、真っ直ぐに生きている。思慮深いし好感が持てる少女。
徹も思春期ぐらいから、親から見れば杞憂する行動をとるが、陽子への想いがいやらしくなく見守りながら葛藤する。
家族それぞれの心情は痛いけど、終盤を迎えるときに急展開する。
罪の重さの意味。
それをここでは書くことしない。
40年経っても、感情を組むことができる名作だと思う。
続編もあるので是非読みたい。
タグ: 三浦綾子
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2007年10月14日

日本ファンタジー賞受賞 森見登美彦『太陽の塔』

太陽の塔太陽の塔
森見 登美彦

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森見登美彦『太陽の塔』
京大を休学している五回生の森本。彼は元カノの水尾さん研究をしていた。彼女の行動を克明に記す。
町にイルミネーションが輝き、クリスマスソングが鳴り響き中、同胞の野郎たちにはある野望があった。

正直に感想を述べましょう。森本はKYのストーカーです。あまりに馬鹿げた行動で、何度か笑ってしまった。馬鹿馬鹿しいのに文章表現は高尚で普段、お目にかかれない語彙、熟語が多数登場。さすが京大生。
では、漢字テストです。

1自己憐憫 2爛熟 3鷹揚 4颯爽 5迂遠


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2007年03月12日

見えない戦争の恐さ 三崎亜記『となり町戦争

となり町戦争となり町戦争
三崎 亜記

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三崎亜記『となり町戦争』。
〔広報まいさか〕で、となり町と戦争が始まることを知る。戦争が始まった気配は感じられない。役場の香西から電話があった。役場に行くと北原は戦時特別偵察業務従事者に任命される。さらに香西と北原は偵察者として、となり町に住むために婚姻届けを提出した。

戦争とは言っても、銃撃戦や戦闘シーンがありません。役場からの説明や広報誌などでも、戦争という公共事業をしていているよう。でも、死者の報告はあります。香西も業務として責務を真っ当してるのが、恐いです。
となり町と戦争をする理由。それは利権。
昨年は、平成の大合併で多くの新しい町が誕生した。しなかった町がドーナツ状に合併した町に囲まれているところもある。どこの町も厳しい財政難を抱えての選択。合併したからといって、問題が解決できるわけではない。議員の意向や、癒着など、公共事業でできたハコモノ。今後、町の財政や、町の行く末を「戦争事業」を通して考えてしまう。
また、戦争という実態がみえないことが、この作品の恐さを物語っている。
タグ:三崎亜記
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2007年01月22日

劇場型犯罪とそれを取り巻く人々 宮部みゆき『模倣犯』

模倣犯〈上〉模倣犯〈上〉
宮部 みゆき

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宮部みゆき『模倣犯』読了。 
公園で散歩をしていた少年と少女が、ゴミ箱から切断された手首を発見する。少年、塚田真一はおびえる。彼は、殺人事件で家族を失っていた。いくつかの経緯で殺人事件の被害者の家族と、ライターの前畑滋子とも出会う。
滋子は事件を考察するルポを書きためていた。
犯人はテレビ局に電話して犯行をほのめかす。
劇場型犯罪の幕が上がった。

『週刊ポスト』に連載していたのが、1995年11月10日号〜1999年10月15日号。この期間に小説の世界だけだと思われた劇場犯罪が起きている。サリン事件、神戸の少年が起こした殺人事件。神戸の事件のときは、村上龍も『イン ザ・ミソスープ<』を新聞連載していて、新聞社には抗議が殺到。ふたりの作家は、人間の闇を描いた作品が虚構ではなく、現実に起きてしまったことに驚愕したかもしれない。(『イン・ザ・ミソスープ』のあとがきにはそのような記述があります)
そして、本を読んでいる時期と前後して、この小説とダブルような犯罪がいくつかあった。報道合戦。ワイドショーも、その手の週刊誌を見ることを、読むことも無いが、いやがおうで目にする機会はあった。さすがに読んでいて、疲れは感じる。しかし、本の内容は気になる。何度なく、本から離れて思考回路を止めたり、リフレッシュ。そこへNODAMAP『ロープ』を観劇。こちらも人間の非道をリングに見立てた中で展開。劇場型犯罪小説を読みながら、聴衆がいることを前提にした劇場劇。小説も芝居も虚構。十分承知しているが、このシンクロぶりは凄かった、まぁ、同じようなものを呼んでしまうことはあるので、そういうことを考える時期なんだ、と納得させる。

野田地図『ロープ』
http://greenfieldsgreen.seesaa.net/article/108108466.html


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